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 今を遡る七五〇年前、建長五年四月二十八日、日蓮聖人は仏教の根本法理を法華経に見いだされ、自身の信仰を南無妙法蓮華経のお題目に結実されました。その後三十年間のご生涯はまさに法華経の行者としての振る舞いでありました。

平成十四年四月二十八日は、聖人が安房・清澄ではじめて南無妙法蓮華経のお題目を唱えられ、立宗宣言されてから七五〇年目にあたります。

 この佳節にあたって聖人ご自身が遺された御書を中心に、その活躍された時代背景にスポットをあて、あらためてその歴史的実像と、崇高な精神、またそれらの継承に努めてきた門下の姿をうかがい、聖人の実像を紹介したいと試み「日蓮聖人の世界展」を開催いたします。

 もとより「閻浮第一の法華経の行者」と称された聖人のお姿を、このような展覧会において、いかほども表現できるものとは思っておりません。まして宗教は感応道交ですので、信仰世界にしかその本質はないのでありましょうから、このさささやかな展覧会を「日蓮聖人の世界」と銘うつことには、若干のためらいもありました。しかし、時にあたって日蓮聖人のお心と実像をいささかなりとも正しく世に伝えたいと念い、多くの人々に聖人の御書にじかにふれていただきたいと願って企画した次第です。

 七五〇年の星霜の間には、幾多の人々が日蓮聖人を尊崇し、その豊かな精神を学んで人生の指針としてきました。しかしその一方で、いまだに外からは日蓮聖人がさまざまに誤解され、内からも一部の人々によってその精神がゆがめて伝えられていることは不幸なことです。明治の文豪・高山樗牛が「日蓮の名を知らぬものはまれであるが、真の日蓮を知る人もまれである」と評した事態は、少しも変わっていないといえるでしょう。

 いま時代は近代主義の矛盾が深刻化し、人々は未来に希望を見失いつつあります。現代人の心は貧しく、社会はますます混迷の度を深めつつあるように思います。この時に当たって、日蓮聖人の豊かな精神と不屈の信念を、この展覧会から一分なりとも感じとっていただければこれにすぐる喜びはございません。

 また、この展覧会によって、何よりも聖人の行動の原点が、一切衆生への真の慈悲であったことを確認し、その聖人の精神を現代社会に蘇生させようとの私どもの微志を少しでもおくみとりいただければ幸いです。

 最後になりましたが、この展覧会開催に当たって、ご指導・ご尽力いただいた多くの方々に深く感謝いたします。

平成十三年四月二十八日                                     
日蓮聖人の世界展制作委員会